人は誰でも依存状態から人生をスタートさせます。
何もできない無力な赤ん坊としてこの世に生まれてきます。
その状態から、成長し自分の足で歩いていけるようにすること、その状態に導くのが大人の大切な仕事であると私は考えます。
自立。
それは具体的にどんな状態なのでしょうか?
=自立とは何か?=
一人で何でもできること、他者と関係を持たずとも生きていけること、それは自立ではなく孤立というのかもしれません。
私の考える自立とはそういうものではありません。
自分を信頼し、他者を信頼し、緩やかに相互依存できる人間関係を複数持ち合わせている状態。
自立とは緩やかな相互依存を通じてた果たされるものであると考えます。
そうであるならば自立の基礎にあるのは、他者に対する信頼感であるはずであり、さらにその基礎にあるのは、自分自身に対する信頼感です。
自分自身の存在に安心感を抱けるからこそ、他者との人間関係に一歩を踏み出していける、私はそう考えます。
親御さんの発する「勉強しなさい!」という言葉。
これは自分の力を頼りに生きていける状態なってほしいという願いが込められた言葉です。
でもそれが親子の関係(それは他者との関係性の基礎となるものですが)を悪くするならば、子どもは果たして自立していけるのでしょうか?
=doの自信とbeの自信=
精神科医の水島広子さんは、人間の自信にはdoの自信とbeの自信がある、と著書の中で述べています。
doの自信。
英語のテストで100点が取れる、100メートルを○○秒で走れる、友達が○○人もいる、これらは行為や所有のレベルの自信です。
これらは、それをできなくなれば、それを持てなくなれば、崩れてしまう極めてもろい自信です。
beの自信。
○○ができる、○○を所有している、などとは関係なく自分自身の存在に対する自信、安心感、それがbeの自信です。
これは常に自分自身とともにある自信です。
能力や所有物が無くなっても消えない自信。
自分自身に対してこういう気持ちを持てること。
それが他者との意人間関係に踏み出すための最初の一歩になり、そして緩やかな相互依存的人間関係を築けるようになること、つまり自立につながるのではないでしょうか。
=beの自信を育てるために=
そうであるならば、「勉強しなさい!」の前にかける言葉があるのではないでしょうか。
beの自信を育てる言葉がけ。例えばどんなものがあると思われますか?
子どもに対して感謝する言葉、子どもの存在を喜ぶ言葉、そういう言葉がけが、子どもの中にbeの自信を育てていくのではないでしょうか。
例えば、
「いつも元気でいてくれてうれしい」
「お弁当きれいに食べてくれてうれしい、ありがとう」
「あなたの顔を見ていると幸せな気持ちになるよ」
これは○○ができたからとか、○○を所有しているからとか、そういうことに関係ない存在に対する感謝と喜びの言葉がけです。
最初は恥ずかしいかもしれません。
お子さんも受け取ってけれないかもしれません。
それでも親御さんからのこういう言葉がけは、お子さんの中に自分という存在に対する安心感を育んでいきます。
「勉強しなさい!」という言葉に込められた願いはなんでしょうか?
それはお子さんに自立してほしい、自分の足で立って生きて行ってほしい、そういう願いではないでしょうか?
でもその言葉がけが、お子さんから自分自身に対する安心感を奪い、将来の自立を妨げているとしたら、、、?
自立とは緩やかな相互依存を通じて果されるもの。
そうであるならば他者のために○○ができるというdoの自信も大切です。
でもdoの自信を持つために、すでに持っているdoの自信が力を発揮するために、その基礎に必要なのは自分自身に対する安心感、beの自信なのだと考えます。
「勉強しなさい」
その前に、
「ありがとう」、
「うれしい」、
そんなお子さんのbeの自身を深める言葉がけを始めてみませんか?
お子さんの将来の自立のために。