先日のブログでは、情報過剰な世の中で翻弄されることなく生きるためには、情報量を絞り込み、知識を身に着けることが大切である、と綴りました。
前回のブログでは筑紫哲也さんのI、K、Wのお話をご紹介しました。
IはInformation(情報)、KはKnowledge(知識)、Wはwisdom(知恵)です。
知識の蓄積によって私たちは押し寄せる情報に右往左往することなく生きていけるようになるのですが、
知識の蓄積で得られるものはそれだけではありません。
知の蓄積が私たちになにをもたらしてくれるのか、見ていきたいと思います。
=知識が知恵に転化するとき=
wisdom(知恵)とは抽象的な言葉です。
知恵:物事の道理を判断し処理していく心の働き。物事を筋道立てて計画し、正しく処理していく能力。(大辞泉より引用)
知恵とはつまり、ある事柄を自分で判断し、処理していく能力のことです。
これはいかにして身につくのでしょうか?
私は、知恵とは知識が経験と結びつくことによって得られるものだと考えます。
経験があっても知識がなければ、その経験が自分にもたらす何かを認知できないわけですから、そこから何かを学び取ることは難しいでしょうし、
知識があっても経験が伴わなければ、それは身体感覚を伴わない単なる知識でしかなく、実生活に役立つ判断能力にはなり得ないでしょう。
つまり、知識を蓄えておくことで、それを蓄えていない人に比べて、私たちは知恵を身に着ける機会を得やすくなるということです。
=アイディアは既知情報の新しい組み合わせ=
知識の蓄積は、新しいアイディアが生まれる土壌を作り出します。
アイディアとは、既知情報の新しい組み合わせだからです。
例えば私たちが毎日のように使っているスマートフォンという便利で厄介な道具がありますが、
あれは、カメラと電話とパソコンを組み合わせることで生まれました。
このようにアイディアとは既知情報の新しい組み合わせなのですから、
頭に様々な知識が蓄積されていればいるほど、新しい結びつきが生まれやすくなるわけです。
知の蓄積が私たちに様々なアイディアをもたらしてくれるわけです。
=記憶力が良い人とは沢山記憶している人=
記憶力は年齢とともに衰えていくものと今までは考えられてきました。
しかし、円周率4万桁を暗記した友寄栄哲さんが、そのギネス記録を打ち立てたのは、なんと54歳の時でした。
友寄さんが記憶した方法は、数字の並びをイメージと結合したり、なじみ深いものと結び付けたりして、ストーリーに仕立てて記憶するというものでした。
つまり、自分の脳内に蓄積された他の知識と結び付けることで新たな情報を記憶していくということです。
つまり記憶量が多ければ多いほど、既知の知識と新しい知識が結びつきやすくなるわけですから、記憶力の良い人とは、たくさん記憶している人と言えます。
頭の中に体系化された知のネットワークを作ることで、新しく入ってきた智識は既存の知識と関連付けられた形で脳の中に配置されます。
それは例えるならば、系統立てて書籍が配置されている図書館の書架に、新しい本が配置されるようなイメージです。
知識が独立して頭の中に入っているより、ほかの知識との関連性の中で記憶されているため、記憶として脳に留まりやすくなるのです。
日本の教育は知識偏重で良くないと言われることも多いですが、私は必ずしもそう言い切ることはできないと考えます。
先日参加した勉強会で教わったことですが、日本人ノーベル賞受賞者にはある共通項があるそうです。
それは全員国立大学出身者であるということです。
つまりセンター試験や共通一次試験を通過し、それ以前であっても国、数、英、理、社の五科目受験をしてきたということです。
創造的仕事をする人ほど、しっかりとした一般教養を身に着けており、それがイノベーションに繋がっているという好個の例だと思います。
情報の海で溺れぬために、そして知識や新しいアイディアで、困難を抱える誰かの力になれるために、子どもたちには学び続けてほしいと感じます。
そのためにも、私を含めた大人が学び続けその楽しさを、意義を、言語化し、子どもたちに伝えていく必要があるのです。