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他人の荷物は軽い 〜虚しさの理由〜

インターネットの情報に触れていると、簡単に稼げる、効率的に稼げる、そんなビジネスの情報を多く見かけます。

また昨今は、AI技術の進歩により単純労働というものが機械に取って代わられる、という話を度々耳にします。

こういう話に通底している価値観は、働くとは金を稼ぐため、しかも出来るだけ効率的に、というものですが、私はそれに違和感を覚えます。

それは働くことの目的は、金銭を得ることだけではないはずだからです。

先日、内田樹さんの著書、「私の身体は頭がいい」を読んでいるときに、こんなフレーズに出会いました。

〝多くの人々は、他人の荷物は重たく、

自分の荷物は軽いと思っている。

それは違う。

逆である。

自分の荷物は重たいが、他人の荷物は軽い。〟

このフレーズに思うことがあったので、ちょっと書いてみようと思います。

私は料理が好きです。

自分のために作る料理より、他者のために作る料理が好きです。

自分のために作る料理は面倒に感じたり、まぁこれくらいでいいか、と思うことが多いですが、

誰かに食べさせる料理を作るときに、そのように感じたことはあまりありません。

食べてくれる人のことを考えながら料理を作る時間は私にとって至福のひとときで、自然と鼻歌を歌いはじめてしまいます。

前にもブログに書きましたが、私は前職で産廃処理工場で働いていました。

そこでは、まだ使えるマスク、入浴剤、まだ食べられるアイスやレトルト食品などが在庫処分の名の下に毎日大量に廃棄されていました。

世の中からゴミを減らす仕事、環境を守る仕事と自分に言い聞かせるように働いていましたが、

何度そう言い聞かせても、大量生産、大量消費、大量廃棄の歯車を回す手伝いをしているようにしか感じられない自分がいました。

自分のやっている仕事は、自分のためや会社のためにはなっていても、本当に社会のためになっているのか?

日々その疑問を抱えて働くうちに、モチベーションは低下し、身体の調子は悪くなり、顔から表情が無くなっていきました。

そんな会社の中でもやり甲斐を感じ身体から力が湧いてくる仕事がありました。

それはトイレ掃除です。

自分がそれをすることで誰が喜んでくれるのか、誰が助かるのか、それが明確な仕事をしている時、私の身体には力が湧いてきました。

今私は、家庭教師の仕事をしていて、日々子どもたちと一緒に学習をしています。

自分がその仕事をすることで誰が喜んでくれるのか、誰が助かるのか、誰のために働いているのか、とても明確な仕事に携わらせてもらっています。

会社勤めをしていた時より休みは少ないし、ボーナスも、有給休暇もありませんが、私は今確かに充実感を抱き仕事をしています。

自分の体験だけを持ち出して過度な一般化は避けるべきですが、

自分のためだけに何かをしていても人は充実感を抱けない、もっと言えば虚しさを感じる生き物なのではないでしょうか?

今、効率的にたくさん稼げますよ、という甘い話がネット上に満ちているのは、働くことに虚無感を感じる人が増えたからこそではないか?

働くことは喜びではなく出来れば避けたい厄介事という仕事観を抱く人間であるからこそ、「効率的に稼げる」という言葉を口にするのでしょう。

どんなに効率的であっても、どんなに金になっても、自分のしている仕事が世の中に貢献しているか定かではないとき、人はその仕事に虚しさを抱くようになり、

その虚しさから逃れるために、更なるお金を、モノの所有を、他者からの賞賛を欲するようになるのではないでしょうか?

働くことが虚しい厄介ごとに成り下がってしまったのは、今の世の中が自分の荷物を持つことにあまりにも必死になり過ぎているから。

そんなことはないでしょうか?

人が働く根源的理由は、お金を得るためではなく、困っている誰かを助けたいから、私はそのように考えます。

そしてその他者への貢献の結果として、私たちは報酬を頂いているのではないでしょうか?

本来結果として得られる報酬を、働く目的に据えてしまったことが、働くことを虚しくしてしまい、

その虚しさを晴らすために、更なるお金を求めたり、不要なモノを買い漁ったり、他者からの賞賛を求めたり、

しかしそれでも満足は得られず更なる虚しさが積み重なるだけ、という負のループを引き起こしているように私は感じます。

働くことの虚しさから逃れるためには、マネーゲームに身を投じるでもなく、不要な物を買い漁るでもなく、誰かに自分の成果をアピールするでもなく、

今まさに自分の傍らで、困難を抱え立ち尽くす隣人の荷を背負うことから始めれば良いのではないでしょうか。

自分の荷物は重く、人の荷物は軽い。

働くことに虚しさを抱きがちな時代に、胸に留め置きたい言葉です。

参考図書:私の身体は頭がいい 内田 樹 著

家庭教師の申し込み、お問合せはこちらからどうぞ。

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息子 ~何を遺して逝けるのか~

昨日、2018年12月2日。

様々な人のお陰様で息子が生まれてきてくれました。

身長50センチ、体重3108グラム。

私は4350グラムの逆子で誕生した生まれながらの親不孝者なのですが、

奥さんのお腹に向けて「3000グラムで生まれてくるんだよ」と毎日話しかけていたら、

本当にそれくらいで生まれてきてくれたとても親孝行な息子です。

バカ親全開で書かせて頂きますが、世界で一番かわいいと思いました。

ほっぺもあごもぷにぷにでずっと触っていたくなります。

あくびをしてても泣いていても、ただかわいくて仕方ありません。

頑張って生まれてきてくれた息子に、頑張って産んでくれた奥さんに、

支えてくれた友人に、病院の先生、看護師さん、助産師さんに、

私を産んで育ててくれた親に、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

本当にありがとうございます。

 

以前にもブログで書きましたが、私は前職で産廃処理工場で働いていました。

そこには毎日のようにたくさんの廃棄物が運ばれてきます。

便利な化学製品を作り出す過程で出る大量の有害物質。

まだ使えるのに、まだ食べられるのに、在庫処分の名のもとに廃棄される様々な製品。

ものすごい臭いのする土や水。

そういうものを無害化処理する仕事に従事しておりました。

ごみを減らす仕事、環境を守る仕事と自分に言い聞かせながら働いていましたが、どんなに自分を納得させようとしても、

私には自分の仕事が大量生産、大量消費、大量廃棄のプロセスを回す手伝いをしているようにしか感じられませんでした。

自分のやっている仕事は、自分のためや会社のためにはなっていても、本当に次の世代のためになっているのだろうか?

違和感を感じながら働き続けてきましたが、その違和感を自分の中で消化し切れなくなり、私は会社を辞しました。

ただ、私が清く正しい人間で、今もそこで働き続ける人たちが間違っていると非難したくてこのように書いているわけではありません。

この世界は様々な矛盾を抱えながら回り続けていますし、大きなシステムを急に変えることは不可能です。

そして私もその矛盾を抱えた世の中で、日々世界を汚しながら生きるインサイダーの一人でしかありません。

今廃棄物処理の仕事に従事する人がいなくなれば、ただでさえゴミだらけの世の中は今よりもっとゴミだらけになってしまうことでしょう。

だから今の世の中に必要不可欠な仕事なのです。

ただ私が自分の中に沸き上がった違和感とうまく付き合えなくなったという話です。

でも私はその違和感を大切に生きていきたいと思うのです。

 

私たちの生活では、GDPがどうだとか、株価がどうだとか、為替がどうだとか、様々な経済指標が日々取り沙汰されています。

経済が成長しさえすれば、様々な問題が解決するかのような、一種の信仰とでもいうものを抱いているようにさえ感じられます。

しかし、私はそこに違和感を禁じえません。

なぜならそこにはお金の計算ばかりで、人の命に対する視点が明らかに欠如しているからです。

土を汚し、水を汚し、空気を汚し、命を軽んじた先に、人の幸せがあるのでしょうか?

私にはどうしてもそうは思えません。

未来の世代から可能性を収奪してまで経済成長などという虚像を描き出すことに、一体何の意味があるのでしょうか?

私には分かりません。

 

私は今、子どもたちと日々学習を通じて関わらせて頂いております。

地味な仕事ですし、日々の勉強も、忍耐も必要な仕事ですが、誰のため、何のためにやっているのかが、とても良くわかる仕事です。

約束した宿題をやっていなかったりすると心の中で「この野郎!」と思うことも正直ありますが、

次を担う世代に何かを遺すことができる本当に大切な仕事だと感じ日々従事しております。

 

私は今、家族がいて、友達がいて、家があり、ご飯も食べられて、風呂にも入れて、布団の中で眠れます。

テレビをつければ「これを買えばあなたは幸せになれますよ」という押しつけがましいCMが大量に押し寄せてきますが、

こんなにも満ち足りているのに、これ以上何を欲する必要があるのだろうかと正直疑問に思ってしまいます。

以前、私にヨガを教えてくださった先生がこのような事を言っておられました。

「人生は何を得たかではなく、何を遺したか」

日々子どもたちと学習を通して関わる中で、次の世代に何を遺して逝けるのか?

浅薄な儲け話や際限のない物欲に惑わされることなく、そこだけを見定めて生きていけばいい。

息子の誕生にその思いを新たにした1日でした。

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